一本だけ見て寝よう。そう思って横になったのに、気づけば一時間が過ぎていた夜が、私には数えきれないほどありました。意志が弱いせいだと思っていたら、そう作られた画面だったのです。なぜなのか、誇張なしで整理してみます。
ショート動画がやめにくいのは、三つの仕掛けが一つの画面に重なっているからです。次の動画が何かわからない変動報酬、手を触れなくても続く自動再生、終わりのない無限スクロールが一緒に働きます。だから止まる瞬間は、画面ではなく、自分があらかじめ作っておくしかありません。
ショート動画の一つ目の仕掛けは変動報酬です。次の動画が面白いかどうか、事前にわからないという意味です。報酬がいつ来るかわからないとき、人は同じ行動をより長く繰り返す。これは数十年前の心理学実験で確認された、古い事実です。スロットマシンが同じ原理で回っています。
面白い動画より面白くない動画の方が危ない理由がここにあります。つまらない動画が出ると「次はいいのが来るだろう」とめくり、そのひとめくりが次のひとめくりを呼ぶ。私は本当に面白い動画を見たときより、いまいちな動画を三、四本続けてめくっているときの方が、長くつかまっていました。
ただし、ここで気をつけたいことがあります。「ショート動画が脳を変える」「ドーパミン受容体が減る」といった言葉は、いまの研究が確認した範囲を超えた表現です。使用時間が長い人にいくつかの差が観察されたという研究はありますが、ショート動画が原因なのか、もともとそういう人がショート動画を多く見るのかは、まだ分けられていません。原理は古い心理学で十分に説明でき、脳の話まで持ち出す必要はないのです。
二つ目と三つ目の仕掛けは、止まる機会を消す側です。テレビは番組が終わればCMが入り、本は章が終われば余白があります。その一瞬のすき間で、人は「もうやめようか」を決める。自動再生と無限スクロールは、そのすき間を正確に消します。
| 仕掛け | 消すもの | 取り戻す方法 |
|---|---|---|
| 変動報酬 | 次が何かわかる予測可能性 | 見るアカウントを登録リストに絞る |
| 自動再生 | 動画と動画のあいだのすき間 | 設定で自動再生をオフにする |
| 無限スクロール | 終わったという合図 | 時間や本数で、終わりを先に決めておく |
三つの仕掛けが別々にあるなら、なんとか耐えられます。問題は、三つが一つの画面に重なっていることです。次が何かわからないのに、手を触れなくても続いて、終わりもない。止まる地点がどこにもありません。これは意志力で勝てる構造ではないのです。
私は長いあいだ自分を責めていました。そんなある明け方、子ども部屋の物音で目が覚めたのですが、私の手のなかのスマホではショート動画がまだ流れ続けていました。時計は明け方の3時で、いつから見ていたのかもわかりませんでした。その日わかったのです。疲れるほど決定する力は減り、画面は疲れた人にこそよく貼りつくということが。
この合図に覚えがあるなら、意志ではなく環境を変える番です。環境は一度変えればすみますが、意志は毎回また出さなければなりませんから。
Sumbiは、スマホを手放す時間を海女の潜水に変えます。潜水時間を決めて始めれば画面を消しても大丈夫で、他のアプリを開いているあいだだけ息つぎが減ります。自動再生が次の動画を決める前に、終わる時刻をこちらが先に決めておくわけです。
はじめての10分潜水 →三つの仕掛けのうち、設定ですぐ消せるのは自動再生ひとつです。動画が終わったとき、指を一度動かさないと次へ進まないようになると、その一度が「もうやめようか」を尋ねるすき間になります。私はこれだけで夜の視聴が半分近く減りました。完全には消えませんでしたが、止まる機会が生まれました。
ベッドでは見ない。このルールひとつが思ったより大きい。横になって見ると体が楽なので、止まる理由がまたひとつ減ります。私は夜9時になったらスマホをリビングの引き出しへ入れて、ショート動画は昼、ソファに座ってだけ見ます。席を変えたら、時間もついて減りました。
ショート動画を止めにくい理由のひとつは、止まったあとにすることがないからです。水を一杯飲む、明日着る服を出しておく。そんなごく小さな次の用事を決めておくと、画面から手を離すのがずっと楽になります。
いまでも、一本が五本になる日はあります。それでも明け方3時は、二度と来ていません。手放した日の一行。画面が決めていた終わりを、今日は私が決めた。
この記事は一般的な情報であり、医学的な助言ではありません。睡眠や日常生活への支障が続く場合は、専門家にご相談ください。