コーヒーを受け取って席に座り、スマホを出さなかったとき、私は自分がそんなに気まずがるとは知りませんでした。手をどこに置けばいいのか、目をどこに置けばいいのかわからず、みんなに見られている気がしました。3分ほど耐えてスマホを出しました。二度目は8分、三度目に30分を越えました。
気まずさの正体は、二つです。手にすることがないことと、人に見られている気がすること。実際には誰も見ておらず、手にカップか本がひとつあれば、最初の10分は越えられます。10分が過ぎると気まずさが収まり、30分ほどになると、カフェの音と窓の外が見え始めます。最初から30分を目標にせず、10分から始めるのがコツです。
カフェでひとりスマホを見ている人は自然に見えて、ひとりで何もしていない人は、どこか変に見えます。スマホが、ひとりでいる人の基本の姿勢になったのです。だからスマホを出さないと基本から外れた感じがして、その感じが気まずさになります。
ここに、手の問題がくっつきます。手は何年ものあいだ、カフェに座るとスマホを握ってきました。空の手は体が覚えていない状態なので、どこへ置けばいいのかわからないのです。心ではなく手が気まずいのだと考えれば、答えは簡単になります。手に何かを握らせればいい。
心理学でスポットライト効果と呼ばれるものがあります。人は、他人が自分を実際よりずっと多く見ていると感じるのです。実験で、目立つ服を着て部屋に入った人は、半分ほどが自分の服を見ただろうと予想しましたが、実際に気づいた人はその半分もいませんでした。
カフェで試してみれば、すぐわかります。顔を上げて周りを見てください。みんな、自分のスマホを見ています。私を見ている人は、いませんでした。それを確かめるのに10秒あればよく、確かめたら、気まずさが半分に減ります。
30分を一度に座っているのは難しい。私は三度目の挑戦でやっと越えたのですが、コツはこうでした。
| 時間 | 手 | 目 | コツ |
|---|---|---|---|
| 0〜3分 | カップを両手で | カップとテーブル | コーヒーの温度、カップの重さに集中 |
| 3〜10分 | 本かメモ帳 | 本、または窓の外 | 読まなくてもいい、開いておくだけ |
| 10〜20分 | 自由 | カフェのなか | 音を数えてみる。カップの触れ合う音、豆をひく音 |
| 20〜30分 | 自由 | 窓の外 | 通り過ぎる人の服の色、歩く速さ |
本は読まなくても大丈夫です。開いておくだけで手と目の行き場が生まれて、人の目にも本を読む人になります。私は10分ほど経つと本を忘れて、窓の外を見ていました。そこからが、本当に座っている時間です。
スマホはかばんのなか、それもファスナーつきのポケットへ。テーブルの上に伏せておくのは、最初の挑戦では効きません。手が3分でひっくり返します。
カフェにひとりで座ってスマホを出さないのは、最初はかなり勇気が要りますよね。Sumbiのバディは同じ時間に一緒に潜る相棒なので、別のカフェにいても、同じ30分を一緒に手放せます。潜水を終えればバディに成功が伝わり、浮上したなら、息を整えてまた潜るという言葉が代わりに伝わります。
バディと潜る →スマホを見ながら座っていると、カフェは背景です。30分をスマホなしで座っていると、カフェが場所になります。窓際の席を日ざしが移っていくこと、豆をひく音の間隔、隣のテーブルの笑い声。何年も通ったカフェだったのに、その日初めて見たものがありました。
20分を越えると、頭がひとりでに整理を始めます。先送りにしていた決断、子どもに言ってあげること、今週やること。メモ帳を持って行くといい理由です。スマホのメモはつけた瞬間、別のアプリがついてくるので、紙が安全です。
一度30分を越えれば、次は10分の気まずさが5分になり、その次はほとんどなくなります。手が新しい姿勢を学んだのです。私はいま、カフェでスマホを出さないのが基本になり、むしろ出すと気まずい。
誰かとカフェへ行ったときも、同じルールを試せます。ふたりともスマホをかばんに入れて30分。会話が途切れたときスマホを出す代わりに、ただ静かにしてみると、その沈黙が思ったより楽だと知ります。私は配偶者とこの30分を週末ごとにやっているのですが、子どもの話ではない話をするようになりました。
手放した日の一行。3分、8分、そして30分。気まずさは消えたのではなく、手が新しい姿勢を学んだのでした。
この記事は一般的な情報であり、医学的な助言ではありません。睡眠や日常生活への支障が続く場合は、専門家にご相談ください。