私には、退屈な瞬間が何年もありませんでした。エレベーターで、信号の前で、子どもが眠るのを待ちながら、隙間ができればスマホが埋めましたから。それがおかしいのだと、スマホを引き出しに入れてから知りました。退屈が戻ってきたら、何かが一緒に戻ってきたのです。
退屈は、いましていることに意味がないから、別のものを探せと頭が送る合図です。その合図をスマホですぐ消してしまうと、頭は別のものを探す機会を失います。退屈な時間に浮かぶ考え、やりたくなること、子どもと作り出す遊びが、その機会です。創造力が上がるというのは誇張ですが、退屈がなければ、始まるものがないというのは合っています。
退屈は、不快な感覚です。研究で、参加者を何もない部屋に15分置いたところ、何もしないでいるより、自分から小さな電気刺激を与える側を選んだ人がかなりいました。頭は空いている状態に耐えるのが難しく、何かで埋めようとするのです。
スマホは、この不快さを消すのに完璧な道具です。手にあって、つけるのに力が要らず、数秒で埋めてくれる。問題は、完璧すぎて、退屈がやろうとしていた仕事まで止めてしまうことです。
退屈は合図です。いましていることに意味がないか、刺激が足りないから別のものを探せという合図。この合図が来ると、頭は二つのことをします。内側で考えを転がすか、外ですることを探すか。どちらも、何かの始まりです。
| 退屈なとき | スマホで消すと | そのままにすると |
|---|---|---|
| 信号の前 | メッセンジャーの確認 | 今日やることの順序が片づく |
| 子どもが眠るのを待ちながら | ショート動画 | 子どもの寝息、明日子どもとやること |
| 週末の午後 | フィードのスクロール | 後回しにしていた趣味が浮かぶ |
| 子どもが退屈だと言うとき | 動画をつけてあげる | 子どもが遊びを作り出す |
右の欄が、創造性と呼ばれるものの実際の姿です。大した発明ではなく、片づき、浮かび、作り出される小さな始まりたち。私はスマホを引き出しに入れたあと、何年かぶりに後回しにしていた編み物をまた握ったのですが、それは決心ではなく、退屈な土曜の午後がさせた仕事でした。
退屈な課題を先にやらせたあと創造性の課題を出すと、成績が少し上がるという実験があります。電話帳を書き写させたあと紙コップの使いみちを挙げさせたら、より多くの答えが出た、という形です。ただ効果は小さく、実験室の課題なので、日常の創造性へそのまま移すのは難しい。
だから私は、こう理解しています。退屈が創造力を作るというより、退屈がなければ始まりがない。スマホがすべての隙間を埋めれば、浮かぶ席がないのです。席を空けておくこと、それが退屈のする仕事です。
子どもには特にそうです。退屈だという言葉にすぐ動画をつけてあげると、子どもは遊びを作る機会を失います。10分だけ退屈のままにしておくと、子どもはたいてい何かを始めます。その10分に耐えるのは、親の側なのですけれど。
退屈な時間は何も残らない気がして、スマホで埋めてしまいますよね。Sumbiでは潜水を終えるたび貝が開いて、海の生きものが私の海に入ってきます。信号の前の10分でも、週末の午後の1時間でも、スマホを開かなかった時間が生きものひとつとして残ります。空けておいた時間が空っぽではなかったと、海が代わりに見せてくれるのです。
私の海を満たす →エレベーター、列に並ぶこと、信号。一日にこういう隙間が何十回もあります。この隙間ごとにスマホを出さないことから始めればいい。最初は手がポケットへ行きますが、その手をそのままにしておく練習です。私はポケットの代わりにかばんへスマホを入れて、出すのに動作がひとつ余計に掛かるようにしました。
週末を隙間なく埋めると、退屈する暇がありません。土曜の午後の2時間を空けておいてください。子どもがいるなら、子どもも一緒に退屈に。最初はみんな、何をするのかと聞きますが、30分ほど経つと、それぞれ何かを始めます。私の家ではその時間に、子どもが段ボール箱で家を作りました。
子どもが退屈だと言うと、解決してあげなければいけない気がしますよね。私もそうでした。いまは、退屈なんだね、何をするか考えてみて、と言って放っておきます。大人にも同じです。退屈は問題ではなく合図で、合図は消すものではなく、聞くものです。
退屈なとき浮かんだ考えは、すぐ消えます。小さなメモ帳を持ち歩くか、家に帰ったら一行書いておいてください。あとで見ると、それが次の週末にやることになっている場合が多い。編み物も、そのメモから始まりました。
手放した日の一行。退屈をなくすのに何年も使ったのに、返してもらってみると、そのなかに、私のやりたかったことが全部入っていました。
この記事は一般的な情報であり、医学的な助言ではありません。睡眠や日常生活への支障が続く場合は、専門家にご相談ください。