サングン、チュングン、ハグン:
海女の等級はどう分かれるのか

海女には等級があります。サングン、チュングン、ハグン。序列のように聞こえますし、実際に序列でもありますが、実の中身は、どれだけ遠く、どれだけ深くまで行けるかの区分です。そして等級には、特権よりも責任のほうが多くついてきます。

ひと目でわかる答え

海女は潜る深さ、息の長さ、採取の腕前によってサングン、チュングン、ハグンに分かれます。最も腕のいいサングンは最も深い海で働き、その日の作業の始まりと終わりを判断し、若い海女を導きます。チュングンは中間の深さを、ハグンは浅い海で経験を積みます。試験があるわけではなく、いっしょに働く海女たちのあいだで自然に定まり、年を重ねて息が短くなれば、浅い海へ戻っていきます。

岸から沖へ深くなっていく海の断面図。距離の違う三つの場所に海女のグループが浮かんでいるイラスト
等級は、岸からの距離として目に見えます。

等級を分けるものは?

ものさしは深さです。どれだけ深く行き、そこでどれだけ息が続き、何を採って上がってくるか。サングンはふつう10メートルより深い海で、2分近く息をこらえて大きなアワビやサザエを採ります。ハグンは5メートルほどの海で短い潜水をくり返します。チュングンはその中間です。村によってはサングンの上にテサングン(大上軍)を、ハグンの下に新入りのエギジャムスを置くところもあります。

正式な試験はありません。同じ海を分け合う海女たちは、互いの腕前を知っています。毎日見えるからです。誰がどこまで出ていくか、何を採ってくるか、危ない朝をどう判断するか。等級は誰かが授けるものではなく、共同体の中で認められていくものです。

等級深さ主な獲物役割
サングン10mの先、遠い漁場大きなアワビ、サザエ、ナマコ作業の開始と終了を判断し、教え、危険を見張る
チュングン5〜10mサザエ、ウニ、アワビ採取の主力、サングンを支える
ハグン5m前後、岸の近くウニ、テングサ、ワカメ技を学び、浅い海で働く
ハルマン(年長)浅い海(ハルマンバダン)サザエ、海藻息のぶんだけ採り、経験を伝える

サングンは何を背負う?

第一の責任は判断です。今日は海に入れるか、いつ全員が上がるべきか、漁場のどちら側が危なくなっているか。それを読むのがサングンです。サングンが水から上がれば、みんなが続きます。良い場所に長居しすぎるハグンに声をかけるのも、サングンの仕事です。

第二の責任は教えることです。潮の読み方、岩の下のアワビの見つけ方、息が切れる前に海面へ向き直る呼吸の感覚。どれも本には書いてありません。サングンがやって見せ、ハグンがついてまねます。海仕事のあとに体を温めたプルトク(海辺の石垣の休み場)では、火にいちばん近い席がサングンの席で、いちばん多く話す席でもありました。

第三の責任は、共同体を代表することです。海女会では、禁採の日取り、漁場の手入れ、新しい組合員の審査といった大事な決定で、サングンの言葉が最も重く扱われます。

ハグンはどうやってサングンになる?

等級は村の外までは持ち出せません。別の村へ移ったサングンは、その海を知らないので、はじめからやり直します。どの岩にアワビが隠れ、どの水路が命取りになるかは海岸ごとに違い、その知識は村の海女会の中だけで受け継がれるからです。

サングンになるには、ふつう十年以上かかるといわれます。そしてどのサングンも、いつか息が短くなる日を迎え、年長者のための浅い海、ハルマンバダンへ戻っていきます。等級は上るだけの階段ではありません。海と体に合わせて、上りも下りもするのです。

自分の息に合う水で

海女は等級が許す深さで働き、そこから息のぶんだけを採ります。Sumbiの潜水も同じかたちで育ちます。10分から始めて、隣の人より深くではなく、きのうより少しだけ深く。Sumbiは、済州海女文化の記録と保存を応援しています。

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等級が共同体に与える秩序

プルトクの席順

海仕事のあとにプルトクへ集まると、座る場所に順序がありました。火のそばの暖かい席はサングン、次にチュングン、外側にハグン。序列ではありますが、同時に学びの席次でもありました。ハグンはサングンの話を聞きながら、海を覚えていったのです。

漁場の分け方

深い海はサングンのもの、浅い海はハグンと年長者のもの。いちばん強い潜り手が浅瀬まで採ってしまえば、いちばん弱い人の取り分が残りません。等級は、海を分けるルールの役目も果たしています。ハルマンバダンは、その最もはっきりした表れです。

揺らぐ等級

現役の高齢化が進むなかで、最も速く減っているのがサングンです。ひとりかふたり、あるいはゼロという村もあります。サングンがいなければ深い漁場は採られず、ハグンは学ぶ相手を失います。等級の仕組みが揺らぐことは、その下にある文化が揺らいでいる合図です。

海が教えてくれた一行。サングンとは、いちばん深く行ける人ではなく、いつ上がるべきかをいちばんよく知る人のことです。スマホの練習も同じで、時間どおりに浮上する人が、いちばん長く我慢する人より長く続きます。

よくある質問

サングンは何人くらいいますか?
村によりますが、全体の中では少数です。高齢化でサングンから先に減っていて、ほとんど残っていない村もあります。
等級で収入は変わりますか?
変わります。深い海の大きなアワビやサザエは最も高く売れるため、サングンの稼ぎが最も多くなります。ハグンは主にウニと海藻で、収入はずっと少ない。新しい海女が潜りだけで暮らしにくい理由のひとつです。
等級が下がることはありますか?
年を重ねて息が短くなれば、自然に浅い海へ移ります。降格ではなく、体に合う海へ帰ることとして扱われ、ハルマンバダンがまさにその瞬間のために場所を空けて待っています。
男性の潜り手にも等級はありますか?
等級の仕組みは女性の海女共同体のものです。男性の裸潜漁者は別に扱われ、サングン、チュングン、ハグンという言葉は使われません。
海女学校の卒業生はどの等級から始めますか?
村の漁村契に入ると、ハグンよりさらに下の新入りから始めます。仮組合員の期間と審査を経て正式の組合員になったあとも、沖へ出るまでには浅い海で数年を過ごします。

この記事は公開資料をもとにまとめた文化紹介であり、数値は参考資料の調査時点のものです。